しん子
会津中将をひと口飲むと、
それはまるで、真夏にコンビニから出た瞬間、
店内の冷気をもう一度味わいたくて、意味もなくドアの前に立ち尽くすような涼しさだ。
甘さはほんのり。
かき氷のシロップを「どの味も結局同じ」と言いながら食べていたあの夏休みを思い出す。
大人になって飲む日本酒に、子どもの頃のくだらない議論が浮かぶのは不思議だ。
香りは華やかすぎない。
まるで夏の文学部の飲み会で、
誰も聞いていないのに「蚊取り線香の渦は哲学的だ」と語っている奴みたいだ。
ちょっと面倒くさいけど、なぜか後から思い出して笑ってしまう。
会津中将は、豪華な花火のようにドンと来るわけじゃない。
けれど縁側に座って、扇風機とスイカとどうでもいい話で過ぎていく夜を、
少しだけ特別にしてくれる。
ああ、日本酒って、意外とユーモアが似合う飲み物なのかもしれない。