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なべなべ
この国に長く住み、この歳になって日本酒の旨さに気がつく、うっかり者。旨濃く、低磨、燗で覚醒する生酛が好きなようです。淡麗より単体でお腹いっぱい胸いっぱいになる重ねの厚い地酒を求めて、迷いまくる初級冒険者です。

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Toyobijin醇道一途純米吟醸
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なべ
こんな時代に澄川酒造さんからの心意気な一本。誰もが美味しいと感じる吟醸を、誰もが手に届く価格で。スイスイ呑める、四合瓶ならなおのこと即完でした。とはいえせっかくの一本ですから普段は発動しない自制心で2日に分けて。2日目馴染んだ味は、球形の甘味と酸味が口中を転がります。人気銘柄なのであまり手を出していませんでしたが、やっぱり美味しいんですね〜 我が家のボスの旧姓がこちらと同じで、一族の出自も蔵元からそう遠くない隣県の山中。嘘か真かは?ですが、平家の落人系とのこと。いつか訪ねてみたいよねと言いつつまだ果たせていません。もし行くことがあれば、蔵元にも足を延ばして亡き義父の墓前に供える一本を求めたいなぁ。義父は生前、晩酌を欠かすことない超呑兵衛。その頃はあまり酒を飲むことが好まずお相伴する機会を逸してしまいました。 こんな時代だからこそ、蔵元さんも厳しい中、人と人をつなぐ盃を満たす美酒を誰もが手にできる価格で世に出したんでしょう。私の場合はもうつなぐことのできない人との一献を想ってしまいました。
Kikuhime山廃仕込純米山廃
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なべ
旨いです。今年はマスクでさらにイヤんな蒸し蒸しも夜になり少しづつ引けはじめたら、お湯を沸かして熱燗タイムだ!豊満なボディに骨太の酸、琥珀味を帯びた塾酒が口蓋を圧倒します。歯応えある系ですが、バランスが良く、丸い。スッと身体に染み込みます。 姫という銘は、たとえば動植物の和名などでは比較的小型種につけられることが多く、それは生物学的な男女差(主に骨格や体躯のサイズ感)に起因すると思われます。不思議なことに女児の方が同年代の男子よりも成長が相対的に早く、我が家の三人娘を見れば確かに成長が早い。ことコミュ能力では既に自称大人の私を超えてしまっており、ここんとこ負け戦続きです。男女差を語ることが時代的コンテクストにより変わりつつある中、それぞれ個としてのびやかに成長して欲しいものです。ちなみにさらに私事ですが、三人のうちには一卵性双生児チームも含まれており、個の発現は非常に興味ある社会的生物学的実験かも?
Kikuhime山廃仕込純米山廃
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なべ
旨いです。今年はマスクでさらにイヤんな蒸し蒸しも夜になり少しづつ引けはじめたら、お湯を沸かして熱燗タイムだ!豊満なボディに骨太の酸、琥珀味を帯びた塾酒が口蓋を圧倒します。歯応えある系ですが、バランスが良く、丸い。スッと身体に染み込みます。 姫という銘は、たとえば動植物の和名などでは比較的小型種につけられることが多く、それは生物学的な男女差(主に骨格や体躯のサイズ感)に起因すると思われます。不思議なことに女児の方が同年代の男子よりも成長が相対的に早く、我が家の三人娘を見れば確かに成長が早い。ことコミュ能力では既に自称大人の私を超えてしまっており、ここんとこ負け戦続きです。男女差を語ることが時代的コンテクストにより変わりつつある中、それぞれ個としてのびやかに成長して欲しいものです。ちなみにさらに私事ですが、三人のうちには一卵性双生児チームも含まれており、個の発現は非常に興味ある社会的生物学的実験かも?
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なべ
桃です。まだ少し固かったかな、くらいの桃です。さすが桃太郎も岡山駅前にいる晴れの国の酒。比較的甘口によりがち(な気がします)の岡山らしい飲み口に果実感のあるジューシーな酸味が添い、わずかにとろりとした桃の果汁感。抜栓直後はわずかにガスを含んでおり、ピーチスキンのようにさわさわと口中をくすぐります。半夏、桃も走りが出始めましたね〜 そうそう、子供時代の余談です。暑くなってくると隣国の山梨に父親の仕事ついでについて行き、桃やブドウを買って帰ることがありました。知り合いの農家さんで分けてもらい、時間に余裕がある時は富士川沿いの渓流で少し冷やして待ちきれずに頬張り、手も口も果蜜でベトベト。そのまま夜まで突っ立っていたらカブトムシやクワガタ(スズメバチも)がわんさか寄ってきそうなくらい、あふれる果汁をつけていました。家に帰る頃には少し痒くなっていたような。 時とともに記憶は薄れ、こうあって欲しいという願望にすり替えられているのでしょうが、桃やブドウを食べると思い出す夏の日。でもあの頃は、もう少し涼しかったのは確かだと思う。
長珍特別純米特別純米
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なべ
既成概念、固定観念、社会通念、ステレオタイプ、偏見…これらは概してあまり良い印象を与えず、打ち破るべき対象として論じられている。とはいえ複雑で予測不能、ましてや個人の微力では抗えない世間に対して自己や自己が所属している群を効率的に保持するには都合が良く、だからこそ誰もが多かれ少なかれ持っている人間の思考的利器。ネットワークの発達により個人と社会の隔壁が消失しつつある中、これらの固着的思考、特に群に属するものの行く末が気になるところだが、あ、明らかに本題から脱線してますね。 いつもお世話になっているお酒屋さんにて「速醸だけどゴッツリ複雑系ですよ、騙されたと思って」と私の固定観念をゆさぶるプッシュで手にした一升瓶。太い酸、太い旨味、飛び切ってもヘタれない強靭な酒体。こいつはやられました。ゴッツリ系は何も生酛山廃だけではない! 蔵のあるあたりは昔から味醂なども醸すエリア。近隣の伝統的な三河味醂は特濃凝縮甘露系。この辺りの土地柄でしょうか。天下をとった三河武士の豪太さ。今度長島スパーランドで絶叫した後には車のトランク一杯この辺りの地酒を買ってこよう!
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なべ
学生時代に学費や生活費に充当した分の余剰バイト収入で手に入れたバイクにテントと寝袋を積んで毎年のように九州にツーリングに行った。社会人となり、幸い「休暇をとらないのはタイムマネジメント能力に疑問」とも判断される外資系ゆえ、しっかり毎年ツーリングに出かけた。勤務先のそばの埠頭から九州行きのフェリーが発着しており、仕事を片付けてさぁ出発。翌朝には阿蘇山麓を駆け抜けていた。火の国は人も気候も暖かく、とても好きだ。 そんな九州からの初さけのわ投稿。主軸は熱燗至上主義だが、控えの一本は冷やでいけるフランカー。銘的には南国感が薄い気がする「寒北斗」、風味酒体はきりりとした収斂度に米味苦味が比較的しっかりした芯を添え冬空に浮かぶ北斗の如く、銘の通りの印象。決してヤワではない。かといってハリガネ粉落としのような硬さでもなく。博多系豚骨に硬め、紅生姜を少々のみでそれ以上の味変無し、か。 そういえば好きになった女性も九州出身の方の比率が高い。自分の名付けは木花咲耶姫(諸説ありますが九州出自)を主神とする神社。何か縁があるのでしょうか?焼酎だけでなく、日本酒でも、大好きな九州を少しづつ学んでみます。
Daishichi生酛 純米純米生酛
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なべ
皐月の過ごしやすさから、ずいぶんと蒸し暑くなってきたが、まだ熱燗至上主義で頑固にやってます(真夏はジントニックに折れちゃう根性無し)。お酒屋さんに行くと判をおした様に「ごっつり昔ぽい御燗で覚醒する低精米、山廃や生酛が好きですが、オススメ教えてください」と訊いてしまいます。 「最近は少ないのよね〜。昔はそんなんばっかりで」と初めて行った酒屋の奥さん。「うちも昔っぽいのが好きなんよ」と言いつつ、だからこそドンズバでお勧めできる一本がないと。「昔はしっかりしてたけど、最近はやっぱ綺麗になっちゃってね〜」と“強いて言えば”で出てきた大七。 冷やから少しずつ温度を上げて飛び切り〜燗冷ましまで試しましたが、やはりキレイ目の今様な仕上げ。生酛由来の酸味も爽やかで、さながら新緑の季節のようです。 人生的に夏過ぎて秋に向かいつつある自分には、もう少しdown to earthというか「ごっつり昔ぽい」、オヤジなお酒がしっくりくるようです。
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なべ
岡山備中の地酒。さけのわでは登録されていない山成酒造さんより。備中井原と高梁を結ぶ旧道沿いにある文化元年創業の古蔵。谷崎潤一郎氏も飲まれたらしいですが、現代の流通では地産地消激レアのようです。 甘さを軸にアル添でキック力を補完した昔造りのスタイルと見受けます。備中お酒は総じて甘さ押し、冷やしてキュウっと。朝出がけの、帰宅して冷蔵庫からお猪口に一杯、麦茶がわりにが私好み。 備中は雄町に代表される米どころ。過日はそれこそ村々に造り酒屋があって本当の地酒を醸していたのでしょう。度重なる戦争や災害、食生活の変化、大量消費に即した量産流通体制など向かい風の中、たくさんの地酒蔵がその酒を愛飲していた人々とともに消えていった。たまたま通りがかった時が止まったような蔵で求めたこのお酒には、人気のある銘柄をいただく時とは全く異なる、なんだろう、寂しいような懐かしいような感覚を覚えます。
Takesuzume野網山田錦純米生酛
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なべ
主張しすぎず、寄り添うような優しさがあります。生酛ゆえ酸は張りますが、丁寧に醸されたのでしょうか、完成度の高い丸みが感じられます。これは勘に過ぎませんが、熟成にも堪えられる、むしろ熟成させるべきだったのではと。決して目立つ酒ではないですが、またきっと飲みたくなる、記憶に残る良いお酒でした。燗が美味しいと思います。 寄り添うといえば、都会から田舎まで人家のそばに寄り添い暮らす雀。目覚ましのアラームより「チュンチュン」で目を覚ます幸せ。旧世界の穀倉地帯に広く分布し、人がいなくなると自然と姿を消す共生関係にあるようです。日本では稲作と共に生きてきた、ある意味日本酒と縁がある小鳥なのでしょう。春になると訪れる燕と共に、私たちに寄り添う。 緑陰に人馴れ貌の町雀 高澤良一 その寄り添い、愛らしい姿ゆえ、とても愛されている雀。そんな印象が銘「竹雀」とよく合います。良いお酒と出会いました。
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なべ
なんだか安土桃山時代なラベル、人も酒も第一印象で判断するのはいけませんが、この手のキンキラは普段なら手にとることはないdeselected系。初めて入った酒屋のご主人の激プッシュにより一升瓶購入。果たして「座右之銘酒 淡麗うまくち」なる謳い文句の真価やいかに? 抜栓直後の印象は、なんだろう、トップノートからエステルバーストするファインフレグランス?ちょっと苦手すぎたので2週間程スティープし再トライ。あら不思議、ある意味とても個性的だったあのパフューム様は落ち着きました。しかしながら、うーん、冷やしても飛び切っても自分の好みには合いませんでした。 絢爛豪華なラベルを安土桃山調と思いこみましたが、群雄割拠の戦乱の世にあらず。パッと咲いてシュッと消える印象は、天下太平となった江戸元禄か、コロ禍もリーマンショックもまだ知らぬバブル紀(この字をつかうとジュラ紀くらい昔に思える)がしっくり来ます。 自分以外のお客様に買ってもらうべきでしたね、本当にごめんなさい。
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なべ
淡路島の都美人、地元兵庫のお気に入りゆえ連投。紅ラベルの一本は南あわじのヒノヒカリを山廃造りで醸した、純淡路産。都美人らしい酸が際立ちますが、こちらの蔵にしては比較的リーンな痩せマッチョ体躯。やはり燗つけで覚醒します。 今年のGWはstay homeですが、早朝の山であればほぼ無人。なので夜明けと共に出発し六甲山をトレイルランを日課としました。家から交通機関を使わずとも登山道に、そして朝ごはんまでには帰ってこれる。霞の向こうに淡路島も見えます。海と山が迫る、阪神間の贅沢です。早起きと運動で晩酌も格別旨くなります。 コロ禍を乗り切り、初夏の淡路島に家族で繰り出そう。そして大好きな都美人を買い出しに!
Tatsuriki山田錦 生酛仕込特別純米生酛
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なべ
生酛とあると、酒道初心ゆえに複雑味を期待してしまう。発酵初期段階にあって自然にマイクロフローラが形成され、平衡収束に向かう過程で主に乳酸と多様な発酵分解生成物が…百聞は一見にしかず。 この龍力は高目の酸度以外は自分の浅はかなステレオタイプ的生酛感がなかった。丁寧に濾過されたのか無色に近い澄んだ酒色、体躯もさらりと軽く、とても飲み易い。料理に寄り添う従順さを持ちつつ、少しだけ、嫌われない程度に個性を主張する。価格や完成度、入手のしやすさ(地元兵庫では量販流通も多い)を考えれば、優良なことは間違いないと思う。 さて、個人的な好みを言えば酒舗の常備酒としては残念ながら選外。洗練よりも野趣を好む自分には、この酒は綺麗で整いすぎている。白く均質で滑らかな肌にくっきりとした絵付けを施した西洋磁器をこの酒としたら、自分は子供のいたずら描きのような作為ない絵付けがされた唐津や、今なら品質管理上廃棄されるようなひしゃげたり窯割れしたような李朝の雑器が茶器として珍重されたような、少し捻くれた酒が好きだ、ということを改めて認識した。
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なべ
春嵐と寒の戻りで「桜」も散ってしまいました。そんな中でも比較的野生種に近いといわれる八重桜系は、萌え始めた新緑に薄紅を添え、福々しい花房をたくさん咲かせ春風に揺れる枝木は、校庭を元気いっぱいに駆け遊ぶ子供たちを見るようです。今頃は、おっかなびっくりの新入生やクラス替えにも慣れた子供たちが真新しい教科書を前に、給食まだかなぁって…休校が続くこのご時世をどう感じているのか、娘たちに訊いてみよう。 淡路の酒蔵、千年一の薄にごり。少し粗めのおりが、あたかも八重桜の花房が咲き散るように酒杯の中で揺れます。島の酒屋さん別誂で責めよりの搾り、甘旨味が迸ります。寒造りに発酵調整の酒精添加が上首尾だったのでしょうか、密果香もよく乗り、醪の福々しい厚みと高酒精度で呑みごたえ十分。 散りゆくも春嵐に負けない八重桜のようです。 ひとひらの 雲ゆき散れり 八重桜 三橋鷹女
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なべ
複雑豪壮系を燗でいただく事が多いため、フランカーとして冷やで気軽に旨い一本を冷蔵庫に常備しています。今回は長野の小作り丁寧な仕込みが冴える信濃鶴。階級は純米ですが、吟醸香が豊かで、もちろん純米の旨味も兼ね備え、その上良心的すぎる価格設定。 信州のイメージバイアスでしょうか、とても林檎を感じます。スーパーに並んでいる低温貯蔵庫連泊したリンゴではなく、木から捥いできたばかりの林檎。「見た目はイマイチだけど、蜜がいっぱい入って旨いよ」って農家のおじさんが分けてくれたような林檎。ジーンズでこすると表面の天然フルーツワックスでツヤッツヤを、ガブリ。おじさんの日に焼けたドヤ笑顔。 なんて書きながら、実は私、林檎の食感が苦手。なんか、歯ぐきヤラレそうな恐怖感。子供の頃に観たハミハキのCMがトラウマ化してしまったのでしょうか?大人になっても克服できなかった代わりに、今は信濃鶴があります。よかった〜
Miyakobijin山田錦 23BY特別純米山廃原酒
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なべ
昔から御食国といわれ旨いものに事欠かない淡路島。今は春は新玉葱、夏は鱧、秋冬は紅葉鯛に淡路牛、とどめはフグ。瀬戸内の穏やかな気候に恵まれ、海も山も温泉も、絶品ジェラートも全部コミで我が家からドライブ一時間。素敵な島を産んでくれた天孫チームに感謝。 銘を聞けば京都伏見あたりの?と連想してしまいそうな都美人は淡路島の酒蔵。主軸は山廃仕込のゴッツリ頑固系で、はんなり都のお姫様感は微塵も無い。熱燗でグイッと決めたい自分には高シンクロ率です。 この23BYは東浦地区の酒屋さんが蔵の貯蔵庫から引き抜かれた古強者(こちらの酒屋さんには阪神淡路大震災翌年醸造の8BY古酒も!)。美人ではなく武人、戦国の鎧武者。重心低く四股を張り、槍衾をも圧し斬る剛の者。飛切燗でも刃こぼれしらず、益々冴える。口中に留めれば積年の円熟した旨甘味が広がり、一献一献が一騎当千。都美人の銘から来るイメージとの乖離は甚だしい。 と、前時代的なステレオタイプの解釈をしてしまう違和感を覚えつつ、このまま投稿して良いのやらと悩んでカラの酒瓶に問うたところ、天啓。よく見れば都美人の「人」に立派なヒゲが。都らしい粋な仕掛けです。
Yorokobigaijin神力純米生酒無濾過
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なべ
餅が好きな家系に生まれた。年の瀬は言うに及ばず夏場以外は親戚の家に集まり餅をついた。庭先に竈門が組んであり、火起こしは子供たちの仕事。学校のプリントを証拠隠滅を兼ねて焚き付けにできる絶好の機会でもあり、酷い採点のテスト用紙を親戚の子供らにすっぱ抜かれないよう死守するスリルも。炎を見続けて火照った顔の子供達への振る舞いは、築き終わった臼底にこびりついた餅。少し湯をかけて緩くなったところを匙で掻き掬い、甘醤油の皿にチョッ、あとは匙を一心に舐る。まさにとろける餅味に醤油の甘酸塩旨味。多めに臼底に餅を残してくれた大人の粋な計らいも旨味のうちか。古きヒエラルキーに則り、まずは神仏に捧げ男衆に振る舞われる餅より、子供に人気だったのは断然臼底のトロトロ餅。大人になると味覚だけでなくコンテクストに大いに依存した嗜好を示すようで、あの頃美味かったモノは、きっと純粋に旨いに違いない。 熱燗から少し戻したあたりで、あのトロトロ餅を舐った記憶がフラッシュバック。米のうま甘味、寄り添う酸味、複雑な発酵味。とてもふくよかで、深い味わい。ため息が出るくらい、純粋に旨い。独りでじっくりゆっくり向き合いたい美酒。
やす
なべさん節、楽しませて頂きました!ぼくもこんな味わいのあるレビューを書かないと。臼底のつきたてお餅のトロトロ、味わってみたいです☆ 学校のプリント、証拠隠滅出来て良かったですね。笑
なべ
みんなのパパは算数と英語のテストが酷くて‥と娘たちに話す母にはバレていたようです。それでもなぜ理系→外資系と進んだのでしょうか?酒は濃醇熱燗、人生はM男のようです。
Usuzumizakuraピッチピチ生原酒原酒生酒
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なべ
今年の桜もそろそろ仕舞い、散りゆく華に萌えでた若芽がエールを送っているようです。卒業や入学、出会いや別れ、春を春らしく送ることがこんなにも大切だったのかと、不自由になりはじめて思い至りました。 桜に因んだ抜栓も今年はこれで仕舞いに。大好きな淡墨桜の新酒、風雪に耐えた山桜のような強さ。同じ原酒のひやおろしと比べるとアル感キックが前面に、淡墨らしい米の甘味が広がります。 来年もまた春は巡り、桜は咲きます。華の下で一年の豊穣を祈り皆で酒を酌み交わすことが再び出来るよう、皆でコロナ禍とウイルスがもたらした不安不信に対峙していきましょう!来年の桜は、いままで以上に美しく咲かせてあげましょうね!
Tamasakura山田錦純米生酛
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なべ
まん丸お月様に満開の桜。世界中の活動が抑制自粛されているせいなのか、月が綺麗です。桜に因んだ抜栓三本目は、島根の玉櫻。八百万の神が集い、八塩折の酒を醸し、日本刀の素材となる玉鋼を産した伊津母の国の酒。 残糖はほぼ無く、あたかも玉鋼を鍛造し不純物を排した刃味鋭い酒質。そこに熟成による旨味がのり、日本刀に例えるなら(刀剣が趣味ですので意味不明ご容赦ください)、経年の錆が浮いた見事な茎(なかご、柄に収まっておる根元の部分)のようです(刀の茎はどちらかと云うと真贋鑑定が主で鑑賞対象ではないのでしょうが、刀身が研がれて経年変化がいわば消されているのに対し、茎は摺上げや贋作化する以外には基本的に鍛造時からの歴史が刻まれ残る部分で、私はとても興味を持ちます)。 昔ながらの生酛造りに時風に媚びない剛健さ、そして時が生み出す味の深まり。熱燗でとにかく冴えます。この一献が注がれるまで、伊津母の国でどのように過ごしたか。水鏡の様に事に動じず、風雪に耐え、泰然と、ではないでしょうか。緊急事態宣言が発出されました。動じず冷静に耐え、力を合わせて難事を乗り切りましょう!そして困難を学びに変え、善き未来の礎に!
Usuzumizakura純米原酒生詰酒ひやおろし
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なべ
桜に因んでの抜栓二本目は、淡墨桜。投稿二度目の大好物、熟成させておりましたが、このご時世、呑まずにいられず。 推定樹齢千五百年とも言われる美濃の銘古木を冠した、それはもう大樹のようなどっしりとした旨甘味、それでいて春風のようにふわりとした緩やかな酸と後口。美酒爛漫。 千五百年前といえば大化改新よりも昔。応仁の乱に戦国時代、太平洋戦争などの度重なる争乱から、飢饉や天災、疫病など、人の世の儚さを見つめ続けている老桜。美濃の厳しい風雪に耐え、春が来るごとに生命力を薄紅色の華に顕現させて、人々に希望を与え続けた淡墨桜。明智光秀もきっとこの桜を愛で、「麒麟が来る」ことを願ったと思います。また散り舞うことで、どんなことにも終わりがあり、そしてまた必ず春がやってくる、世の輪転を示したのではと。 何かと暗いご時世ですが、この先にはもっと良い春が必ず来ます。今までもそうでした。だから絶対にこれからも。