これが「伝統の、未来形」。
天狗舞の原点である“山廃仕込み”を礎にしながら、次の世代へ繋ぐ“零”という名の挑戦。
ラベルの天狗が顔を隠しているのが印象的で、
「本当の顔は、飲んだ人にだけ見せるよ」——そんなメッセージを語りかけてくるよう。
スペックは非公開。
でもだからこそ、飲み手の感覚にまっすぐ届く。
香りは控えめで静か。一口ふくむと驚くほどやわらかく、
じんわりと甘みと旨みが広がり、やさしく消えていく。
そのあとを追うように、“零らしい”すっとした酸が全体をまとめてくれます。
山廃らしいしっかりした輪郭がありながら、全体の印象はあくまで繊細。
引っかかりのなさは、まさに危険なレベル。
「ゆっくり飲もう」と思っても、気づけば盃が進んでしまう——
そんな“やさしさ”と“深み”が共存する、静かな凄みを感じさせる一本です。
200年の歴史を持つ天狗舞が、“零”からもう一度はじめる気持ちで仕込んだこのお酒。
伝統に敬意を払いながら、若手が未来に向かって挑戦する姿勢が、味わいにもにじんでいます。
「零(ゼロ)」という名前が、未来への出発点に見えてくるような、そんなお酒でした。