昔話ばかりで恐縮だが、かつて私は香港に駐在していた。当時の香港には玉石様々な日本食屋があったが中でも「道楽茶屋」というお店が頭ひとつ飛び抜けていて、お店オリジナルの「樽酒」が大好きだった。
京都から取り寄せたお酒を杉の片口で供するもので非常に良い薫りがしていくらでも飲めたものだ。
この人気一は義姉から戴いたもので、木に触れ続けながら醸されたのだろうなという香りがする。味は何やら丸っこくて野暮ったいと言えなくもないが、それが愚直に思えて逆に好感が持てる。
道楽茶屋のあの頑固な大将はどうしているかな、あの樽酒の片口売ってもらえばよかったな、などと考えながら木の香りを楽しんだ。