まずは冷酒で。
冷えた石のような香り。硬い。
飲む。とろけるような甘さが流れ込んでくる。冷たく新鮮で、持続する甘さ。やや人工的に思えた。若いバナナのようなフレッシュなねっとり感。とろみ。飲み込んだ後は、少しの苦みと酸味。
次は45℃の燗。
発酵感のある藁。酸味。
飲む。するりと口内に侵入し、その存在に気づくと同時に押し寄せるとろみのある濃厚な甘さ。そして苦みと少しの渋み。飲み込むと、鼻から抜ける甘いアルコール。
次は55℃の燗。
発酵感とアルコールの区別がつかない。目を閉じると早朝の田舎の畑。まだ眠っていたい頃。
飲む。甘い。水飴を噛んで飲んでいるよう。飲み込むと、どっしりとした満足感でお腹いっぱい。
次は65℃の燗。
日の出が見える。畑で一仕事終えた時の達成感、今日への希望。時刻は朝6時20分頃か。
飲む。焼き藁の香ばしさが脳裏に浮かんだ瞬間、それをかき消すように押し寄せる圧倒的な甘さ。この温度でも甘味を保つ酒は珍しいと思う。
うっとりしつつ飲み込むと、舌元に残る心地よい苦み。
どこかで酸味のアクセントが欲しかった。
が、良い酒。レギュラーラインの普通酒があれば飲んでみたい。