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グラスに注いだ瞬間、まず目を奪われるのは、その色。まるで琥珀のように美しい金色。熟成酒ではなく、できたての新酒でこの色合いは本当に驚きです。
一口含めば、黒蜜や干し柿、熟したドライフルーツを思わせる、濃厚でまろやかな甘さがとろりと広がります。でも、不思議とくどさはなく、後味はスッと消えるようなキレの良さ。このギャップがとにかく印象的でした。甘さの奥には、しっかりとした酸味と旨みがあり、それが全体の味わいをぐっと引き締めています。
実はこのお酒、江戸時代の百科事典『和漢三才図会』に記された製法をもとに、現代に再現されたもの。酵母や乳酸菌などの添加物を使わず、麹造りにはなんと72時間、生もと仕込みの酒母には1ヶ月近く。仕込み水を少なくして、硬く重たいもろみを2ヶ月かけてじっくり発酵。搾るのにも苦労するほどの手間をかけているのだそうです。しかもこの挑戦を行ったのが、日本唯一のイギリス人杜氏・フィリップ・ハーパーさん。真面目に300年前のレシピを再現したら、こんなに美味しい「甘口だけど、スッとキレる」魔法のようなお酒ができてしまった…そんな背景ごと、愛おしくなる一本です。