くぅねる
青春時代、苦い経験しか思い出せない。
飲みの席で晴れやかな表情で青春時代の甘酸っぱい経験を語る男性がいる。
世の中は不公平だということは重々承知のうえでこれだけは言いたい。
あぁ、イケメンに生まれたかった。
そんなわけなのだろうか、この水酛仕込みの甘酸っぱい味が大好きなのだ。
俺は青春時代に経験できなかった淡い思い出を取り返そうとしているのだろう。
バレンタインの日はちょっとそわそわしたり。
後夜祭のときもちょっとそわそわしたり。
体育祭のときもちょっとそわそわしたり。
卒業式のときもちょっとそわそわしたり。
そんな無駄にそわそわした恥ずかしい自分を思い出しながら甘酸っぱい花巴を口にするのである。
頬を伝う塩辛い隠し味とともに。