ch_a_ma
純米吟醸 金魚
夏酒が好きだ。
カンカン照りの太陽から逃げ延びて命からがらたどり着いた夕暮れ時、キリリと冷やして一献傾ければその味わいは爽やかに涼やかに、風鈴の音のように全身を駆け巡る。
暑さが苦手な身にとって夏という季節の数少ない楽しみであり、一年で最も過酷な季節を生き延びるための命の水とも言える。
そんな夏酒の世界に私を引きずり込んだのが他でもないこの阿部勘金魚。
一見ただの真っ白なラベル、しかし裏側から覗いてみれば酒の中を泳ぐ金魚金魚また金魚。夏らしさど真ん中の演出への高揚と驚き。世に日本酒の数あれど、飲む前から美味い酒にはそうそう出会えるものではない。
味の方も言う事無し。阿部勘の夏酒ここにありと言った味わいで、辛口で軽やかな飲み口と程よい酸味、後味の旨味は強すぎず弱すぎずの絶妙な加減。刺身の類は勿論のこと薬味たっぷりの冷奴やキンキンに冷やしたつゆで啜るそうめんなど、涼し気な食べ物であればおおよそ全てに合うこと間違いなし。
全てが夏に合わせて誂えられた一品は四季のある国で作られる酒の粋。金魚なくして夏酒なしと言い切っても良いのではないかと思うほど、どこまでも夏らしい酒である。