なべ
五味の中でも旨味は近年まで国際的認知が低く、washokuの流行とともにumamiとしてもてはやされているようです。新しい概念ゆえか、カクテルに出汁を取り入れたり斬新な解釈が生まれ、逆輸入されているのは面白いですね。
好ましい味覚風味は生物の食物摂取を良く履行させるインセンティブ、なかでも旨味はアミノ酸や核酸などの栄養素が豊富に存在するマーカーなのでしょう。多くの文化圏では発酵により遊離アミノ酸や核酸を増やしているのに対し(例えば熟成チーズのシャリシャリ結晶)、国土のほとんどが軟水の日本などでは発酵だけでなく、昆布や鰹節、干し椎茸などから旨味成分を抽出する料理法が生まれたと言います。グルタミン酸やイノシン酸、グアニル酸が軟水に溶け出しやすい性質(正確には主にそれらのナトリウム塩)をサイエンスではなく生活の知恵として継承する、まさに文化ですね。
酒評ですが、このお酒はumami forward。日本酒の旨味はコハク酸系(貝類の旨味)らしいですが、私には干し椎茸(グアニル酸系)を感じます。2012年醸造だからでしょうか。残糖もほとんど無く、旨口ではなく枯口、枯淡な風味です。