なべ
子供の頃、静岡生まれゆえに緑茶はデフォだとして、冬場のご馳走飲み物といえば甘酒だった。貧乏な家に生まれた子供に友達の家で出てきたハイカラなココアをねだる勇気は無く、酒粕を溶いた甘酒に甘んじていたのだが、今となっては懐かしくそして家計をやりくりしていた母に感謝の念。
甘酒を最後に加えて醪の旨みと柔らかな甘味を増した酒軀、少し強めの酸味が心地よい。春の陽気も陽が落ちれば寒が戻るこの季節、温燗が良い気分です。そういえば、母は一緒に甘酒を飲んだのだろうか。記憶がない。いつも自分は我慢し、ささやかなご馳走を他に分けていた様に想う。
燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや
鴻鵠とは成らずとも、季節が巡れば故郷に渡り帰る鴻鵠に倣って、春すぎて十分暖かくなった頃には故郷に帰ってみるか。鴻と甘酒、そして何故か憧憬。歳くったな〜